ロールスロイス
in サンタバーバラ
一般的には、高級車になればなるほど、
発表会や試乗会は贅沢なものなり、華美なものになります。
ところが、ロールスロイス/RRの試乗会はまったく趣を異にしていたのです。
ちょっと前の話になりますが、
カリフォルニアのサンタバーバラで行われた「PHANTOM」の試乗会は、
「ひっそりと」、と形容してもいいほど、静かに控えめに行われました。

堂々たる佇まいです。
パルテノン神殿がピタリと決まるクルマなんて……凄い! としかいいようがありません。
招待された人数が少なかったことも、
そんな印象を強めたのかもしれませんが……。
プレゼンテーションもごく簡潔であり、
カクテルも、ディナーも、粛々とした、
しかし、フレンドリーな雰囲気の中で行われました。

プレゼンテーションも控えめです。大型のプロジェクターなど一切使われませんでした。

後ろ姿も貫禄です。重厚です。

ルームランプひとつとってみても、なんとなく近寄りがたい雰囲気を感じます。

試乗会の1ショットです。
背後にはブドウ畑が広がっていますが、こんなのどかな場所で試乗会は行われました。

「フライングレディ」と「RRバッジ」は欲しいと思いますが……、
部屋のどこに置けばいいのか……すぐには思いつきません。

後席に座るより、ステアリングを握っている方が僕はずっと落ち着きます。
正直なところ、あまりに淡々とした進行振りに最初は戸惑いました。
……ですが、しばし時間が経ってからハタと気付いたのです。
「RRほどになれば、華美に、賑々しく振る舞う必要などないんだ!」
ということに。
「目からウロコ」ではありませんが、
改めてRRの凄さを思い知らされました。
あれこれ飾り立てたり、贅沢な食事を振る舞ったりすることは、
RRのステータスを削ぐことになる……きっとそう考えているのでしょう。
華美に振る舞うようなことは、RRのプライドが許さないということです。
そういえば、RRのプレスキットも控えめです。
とはいっても、むろん上質ですし、絶対に捨てられません。
捨てられないのはRRのプレスキットだから」、
というのが、いちばんの理由ではありますが、それだけではありません。
プレスキットにまで「オーラ」が漂っていて、
捨てたりしたらバチが当たる……そんな気がしてしまうのです。
書棚に置いてあるだけで部屋の価値が上がるような気もします。
絶対に捨てられないプレスキットは他にもありますが、
これほどの重みを抱かせるプレスキットなどRR以外にはありません。
PHANTOMのプレスキット。A5サイズのコンパクトなものですが、中身は充実しています。
僕の部屋の片隅には、なぜか黒い傘が1本立てかけてありますが、
実はこの黒い大きなこうもり傘、
PHANTOMの試乗会でもらったもので、RRの紋章が入っています。
まだ一度も使ったことはありませんが、これからも使うことはないでしょう。
RRの紋章の入ったこうもり傘をさしてゆくところなど、僕には思いつきません。
「RRが似合うような男」になりたいと思うこともありますが、ムリです。
ちなみに「RRが買える男」と「RRが似合う男」はまったく意味が違います。
では、また明日。

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



