駆け抜ける歓びさらに深く大きく
BMW 335i クーペ その1
トロフィーを独占してきた理由もうなずける
「駆け抜ける歓び」とはBMWのキャッチコピーだ。いいコピーだと思う。そして実際、最近のBMWは、そんなキャッチコピーに相応しいクルマを送り出し続けている。
BMWの「駆け抜ける歓び」を構成している基本要素は、エンジン、シャシー、デザインの3つだ。
まずエンジンだが、その特徴を端的に表せば、「気持ちのいいエンジン」ということになる。単にパワーがある、スムースに回る、といったことだけでなく、回転感、パワーフィール、サウンド等々、いずれも「気持ちがいい」。濁りもなく雑味もない。その上ドライバーとのコミュニケーションは濃密だ。
母音をはっきり発音し、抑揚の効いた話し方をする人との会話のように、インテリジェンスとデリカシーを感じさせられ、さらに心までも動かされる……そんな心地よさがBMWエンジンにはある。
毎年、優れたエンジンを選出する「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」という国際イベントがあるが、1999年の第1回目から2007年まで、BMWエンジンは、グランプリにしろ、部門賞にしろ、圧倒的な数のトロフィーを獲得している。納得である。
ちなみに今年も、335iに積まれる直列6気筒の3lツインターボがグランプリを獲得したが、当然の結果だと思う。これほどの洗練されたターボエンジンを、私はかつて経験したことがない。

静謐な、ともいえるほど淡々粛々としながらも、痺れるような快感をもたらすものは一体何なのか。
ここまでくるともう、「BMWマジック」だとしか言いようがない。
世界の主要メーカーの6気筒エンジンがすべて効率重視のV6に替わっている中で、独り、回転バランスにこだわって直列6気筒を使い続けている点も、BMWエンジンの神話性を高めている。
シャシーは前後重量配分50:50に近づけることを基本的なポイントにしている。その理由はむろん身のこなしをよくするためだ。
だから前後に長い直列6気筒もフロントミッドシップ的に積む。
その結果、前輪は前方に位置し、長めのノーズと短いフロントオーバーハングによる、独特のダイナミックなプロポーションが生まれる。
そして、そんなレイアウトは、ホイールべースの中央からやや後方という、スポーティでカッコいい位置にドライバーを座らせることにも結びつく。中でも、背の高めのドライバーがステアリングを握る3シリーズ・クーペはその代表格。クルマとドライバーのシルエットが最高にバランスよく見えるのだ。
(『zino』2007年10月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



