エコ2台持ちのインテリジェンス
スマート、E320CDIワゴン その1
クルマを愛するからこそ環境問題さえもポジティブに解決したい
「いま、自動車に突きつけられている、いちばん切迫した問題/課題はなにか?」といえば、それは燃費=CO2の削減だろう。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、「20世紀半ば以降の世界平均気温上昇の多くは、人為的なものに起因している可能性が高い」との報告書を提出しており、地球温暖化がもたらしている様々な異常現象を知るにつけ、CO2問題は、誰もが否応なく関心を持たざるを得ない状況になってきている。
そんななか、日米欧を中心に厳しい燃費規制=CO2規制が次々と打ち出されてきているが、中でももっとも厳しいのが欧州。昨年暮れ、欧州委員会は「2012年までに130g/km(企業平均値)」という規制案を決定した。正式決定までには多少の紆余曲折はあるかもしれないが、いずれにせよ、こうした厳しい規制が実行されるのは間違いない。
規制には罰則が伴うが、規制値を1g超えると1台当たり20ユーロ(約3100円)の罰金を支払わなければならない。そしてさらに、この罰金の額は年々引き上げられる。つまり、規制への対応の遅れはメーカーの経営基盤を根底から揺るがしかねないことになり、とくに、大きく、重く、高性能なクルマが中心になる高級車メーカーは厳しい。
ちなみに、メルセデス車を例にとれば、S600Lが340g、E350が244g、B170が175g、スマートのガソリン車が112g、ディーゼル車が90gといったところ(2007年モデル)だが、こうした数値だけを見ても、企業平均130g/kmという規制値がいかに厳しいものかが容易に理解できる。EUの規制案では、複数のメーカーがグループを組むことが許されているが、となれば、当然、小型車中心のメーカーと中大型車中心のメーカーが手を組むといった新たな流れも出てくることになるだろう。
日米欧では市場構造の違いもあって、規制値もスケジュールも異なるが、いずれにしても、燃費=CO2削減への取り組みが今後の最重要課題であることに変わりはない。
そしてさらに、原油価格の高騰=ガソリン価格の高騰がその流れを加速させている。ここでもまた、燃費向上は逼迫した課題になっている。
メーカーは、動力源を中心としたパワートレインの高度化/多様化、車両の軽量化、小型化、空力的洗煉等々、あらゆる可能性に取り組まなければならないが、われわれユーザーもまた、いろいろな意味での自衛意識と社会的意識を強く持たなければならない時期にきている。
それも、マイナス志向ではなく、あくまでもプラス志向で、である。
そんなことで、今回は上記のような時代の流れに沿った、クルマ選びの一例を示してみたい。
まず、ファーストカーとしてピックアップしたいのはスマート。
クーペとカブリオがあるが、どちらもカッコいいから好きな方を選べばいい。ただし、カブリオの方がリッチに見えるのは確かである。
私の知る限り、スマートをもっとも多く見かける街はローマとミラノだが、面白いのは、ふたつの街のスマートの表情の違いだ。
ローマに棲むスマートたちはカラフルでやんちゃなイメージ。ところが、ミラノに棲むスマートたちはグッとシックで大人っぽいのである。ローマのスマートたちはほとんどがクーペで、カブリオを見かけることは希。ホイールもほぼスチールだし、シートも布。さらには、ピカピカに磨き込まれたスマートもめったにないし、小さな傷やシートの綻びを気にする様子もない。
でも、ローマのスマートたちは元気で働き者だ。狭い路地裏を縦横無尽に走り回る。小さな広場で一日中サッカーに夢中になっている子供たちのように、明るく、活溌だ。
「こんなスマートの使い方っていいよな!」といつも思う。
ところが、シックで大人っぽいミラノのスマートたちを見ると、これまたコロリと参ってしまう。
ミラノ、とくにトレンディなエリアで見るスマートたちの装いはというと、圧倒的に無彩色系が多い。
ホイールはアルミで、シートは革張り、カブリオ比率も高い。もちろん内外装に傷などないし、ボディはピカピカ。洒落たショーウィンドーを持つ店の前に駐まっていることが多いが、そんな店のオーナーとクールに装ったスマートのイメージはピッタリ重なるし、彼らとスマートが演じるライフスタイルをあれこれ想像するのも楽しい。
新型スマートは一回り大きくなったが、それでもスリーサイズは2720×1560×1540mmでしかない。しかし、キャビンに乗り込むとサイズアップの効果はすぐわかる。ゆとりは明らかに増し、快適度は旧型より2ランクほど上がった。
セミATのギアボックスは相変わらずテクニックを要求するが、逆にそれが楽しいと言う人もいる。
静粛性/乗り心地も素晴らしいとはいえないまでも納得はできるし、性能的にもハイウェイの流れに無理なく乗れるレベルの余裕はある。
「ふたり乗りでいい」ときっぱり割り切れる人、どう控えめに振る舞っても目立ってしまうことを愉しんで受け容れられる人、エコな行為をお洒落に粋に実行したい人……こんな人にスマートはお勧めだが、やはりミラノ型の乗り方をお勧めするのが筋だろう。
スマートをファーストカーとして選ぶなら、セカンドカーはある程度のサイズがあって、多用途性もあるクルマがいい。加えて燃費も優れていれば言うことなしだが、もうひとつぜひ加えておきたいことがある。
それはスマートと並べても違和感のない粋とインテリジェンスをもっていることだ。となると、かなり難しい条件になるが、完全にフィットするクルマが1台ある。
(『zino』2008年6月号掲載記事)

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スマート、E320CDIワゴン その2


1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



