ドイツのビジネスシーンは
「濃口」ポルシェが旬! その2
緊張感が走るビジネスエリートの美学に惚れる
ミラーガラスのビル群が濃い陰影を纏いだす頃、ビジネスラッシュアワーが始まり、白やブルーのシャツにタイを着けた男たちがステアリングを握るクルマが急に増え始めた。ランチタイムを挟んだ時間帯にはフェラーリも見たし、アストンマーチンもジャガーもマセラティも見た。が、夕刻のビジネスラッシュアワーの時間帯になると、道路はほとんどドイツ車で埋め尽くされる。
それも、メルセデス、BMW、アウディの中位モデルの比率がハネ上がる。Eクラス、5シリーズ、A6といったところである。これは、ドイツでは広く一般化されているカンパニーカー制度がもたらしている現象だと思う。
つまり、ドイツ金融ビジネスの中枢を占めるフランクフルトのエリートビジネスマンの多くが、カンパニーカーとして、ジャーマンプレミアムの中位クラスのモデルを選んでいるということだが、納得である。
加えてもうひとつ、こうした流れの中で、突出した存在感を示していたのが911だ。このことについては、また後で詳しくご紹介する。
ボディカラーは黒などダークの濃口系がほとんどだか、、一様にきれいに磨き上げられているのが印象的だった。欧米のビジネスエリートたちは、たたずまいをを正すことにも熱心だが、クルマをきれいにしておくこともまた、一連の身だしなみのひとつなのだろう。
運転姿勢が一様にきちっとしているのも同じ理由からではないか。ドイツに限らず、欧米のビジネスエリートたちは、単にビジネス能力に優れているだけでなく、自分を高く評価してもらうために多くの努力をする。身だしなみを整えるのはもちろん、シェイプアップに励み、清潔さを心がけ、姿勢や所作にも気を遣う。
そんな人たちの乗るクルマが行き交い始めると、道路はもとより、周辺の空気感まで整然とし、ピリッとしたものに変ったような気がした。
昼間は雑然とした雰囲気で、クルマの動きも千差万別だった。が、ビジネスラッシュアワーになると、混雑の度合いははるかに増すのに、全体の動きは整然とし、流れの波動は俊敏になる。すべてがそうだとはいわないが、なんとなくピンと張り詰めたような空気感とクルマ全体の動きが、緩慢な、あるいは散漫な運転を許さないような雰囲気を生み出すのは確かだろう。それにしても、きれいに磨かれたダーク系プレミアムカーの車列が、途切れることなく、整然と俊敏に流れてゆく様には惚れ惚れする。
フランクフルトのビジネスエリートたちの美学を強烈に見せ付けられた思いだった。
写真/千葉 充
(『zino』2007年12月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



