超弩級の選択 ポルシェ2台持ち その1
2台合わせて980psの怪物的パフォーマンス
ポルシェ911ターボとカイエンターボの2台持ち……まさに最強のコンビネーションといえるが、ここで言う「最強」にはふたつの意味がある。ひとつは、 スーパーブランドたるポルシェのトップモデル2台を所有する充足感であり、もうひとつは、合わせて「980/1380Nm!!」の怪物的パフォーマンスをわが物にする悦びだ。
ひとつは、「すごいなあ!」「いいなあ!」といった反応で、もうひとつは、シラ〜っとした顔での「ああ、そうですか」といった反応だ。つまり、素直に関心する人と反感を持つ人がいるということである。
同じことは、時計でも、スーツでも、バッグでも起きるが、誰もが高価なものだと知っているブランドほど、そうした反応は起き易い。
ポルシェの2台持ち、とくに「目立ち度超一級」の911ターボとカイエンターボのコンビネーションともなれば、まさにそんな反応を引き出す典型的ななサンプルだろう。
それだけに、着こなしたとき、乗りこなしたときの快感は大だ。
例えば、デイビット・ベッカムやルイス・フィーゴのような、力も華もオーラもあるような男なら、誰も反感の目で見たりはしない。ただ憧れの目で見るだけだろう。
ただし、ベッカムやフィーゴのような男でも、粗野な振る舞いやマナーを欠いた運転をすれば、一転して強烈な反感を買うことになる。
そもそも、911ターボにしてもカイエンターボにしても、存在感そのものに威圧感があるだけに、ちょっとでもマナーを欠いた振る舞いをするだけで、一発で「レッドカード」が出される。「早く消えてしまえ」といった反感の目に包囲される。こうした存在感の強いクルマは、乗り手次第で輝きもすれば曇りもする……表と裏くらい大きく変わるということだ。
もっとも、感受性の鈍い人は、そうした反感の目さえ憧れの目と勘違いしてしまいがちだが……。
いずれにせよ、最高のスーパーブランドを2台持ちながら、冷ややかな目に晒されるなど、割の合わない話だ。だから、マナーと装いと立ち居振る舞いには気をつけて乗りたい。
流れに乗ってスムーズに走り、追い越すときは周囲に十分注意を払った上で切れ味よく追い越す。そう、フェルナンド・アロンソのように、注意深く、スムーズに、それでいて鋭く追い越せばいい。
マナーをわきまえた知的で洗練された運転は、911ターボとカイエンターボを輝かせ、その乗り手を輝かせるもっとも有効な方法だ。
911ターボもカイエンターボも追い越しはもっとも得意とする種目だが、とくに911ターボの追い越し加速は最強の「必殺技」ともいえる。
その必殺技をマナーよく繰り出すことは、周りの目を憧れの目にさせる必須項目のひとつである。
ち なみに、最近はアウトバーンも年々走り難くなってきた。速度制限区間は多くなっているし、マナーも低下気味だ。必然的に流れも乱れてくる。だから、高速で巡航するためには、加速とブレーキ性能に優れていることが何より重要だ。そして、そんな条件を最高レベルで満たしているのが911ターボなのである。これは、場を日本の高速道路に置き換えても同じことが言える。もちろん、カイエンターボも、SUVしては最高の加速性能とブレーキ性能を持っている。
「安全に走る意思」を持っていさえすれば、911ターボもカイエンターボも最高のレベルで応えてくれるクルマだということだ。
私がポルシェのステアリングを握って経験したもっとも高い速度は、2001年に乗ったGT2での303km/hメーター読み)だが、270km/h以上ではそうとうな緊張を強いられた。だが、4WDシステムを持ち、GT2より多くの点で進化している最新の911ターボなら、未経験ではあるものの、さほど緊張せずに300km/hを記録できそうだ。
また、許される道路さえあれば、250km/hは「実用域」に入っているのではと思う。
むろん、911ターボはブレーキ性能も素晴らしい。とくに、135万円のオプションで用意されるPCCB=ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキは威力は最高だ。効きだけでなく、耐フェード性も圧倒的に高い。200km/hから100km/hまでのフルブレーキングとフル加速を3度繰り返したことがあるが何の変化も感じさせなかった。
4輪トータルで20kgほどバネ下重量が軽くなるのも大きなメリットだ。接地性にも乗り心地にも少なからぬ効果をもたらしている。
911ターボは速いと同時にコントロール性も最高レベルにある。しかし、それだけに、911ターボに乗るときは「何事にも必ず限界はある」という原理原則を肝に銘じておきたい。自己主張のアイテムとして911ターボを選ぶのならともかく、本当に「走りを楽しむつもりなら、10分でも15分でもいいから、日々、エクササイズを重ねる程度のことはしたい。
911ターボは乗り心地もいいし混雑した街を走るのも得意。とくにティプトロニックを選べば、大渋滞の中でも悠然と構えていられる。
(『zino』2007年7月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



