岡崎宏司の考察と結論
カイエン GTS その2
ポルシェはカイエンGTSを「サラブレッド」と呼ぶ
メルセデスにしても、BMWにしても……フルラインナップ化が進み、販売ボリュームも百数十万台規模になっている現在、ブランド・バリューは薄められがちだ。

しかし、ポルシェの販売ボリュームは10万台規模にすぎないし、基本モデルも4モデルしかない。さらに4モデル中3モデルは、フラットシックスをリアあるいはミッドシップに積む他に類のないスポーツカーであり、カイエンもまた強烈な個性を持っている。
4枚のドアと快適なキャビンをもつSUVであるという点では、カイエンに特別なものはない。しかし、その佇まいと走りには特別なものがある。ポルシェならではの佇まいがあり、ポルシェならではの走りがあるということだ。
カイエンの顔は、どうひいきめに見ても美形とはいえない。とくにターボとGTSの顔は強面の右代表といったところだ。
中でもGTSはターボと同じ顔に加え、ホイールアーチは14mm張り出し、車高もSモデルより24mm低い。GTSがバックミラーに映ったら怖い! 私はすぐ道を譲る。しかし、この超ド級の強面がモテル!
もしこれがポルシェでなければ、かなり辛辣な評価が下される可能性大だが、ポルシェであり、ポルシェの中でも特別な地位を持つモデルであれば、憧れの対象になる。
それは、強さと人気を兼ね備えたヘビー級チャンピオンに抱く気持ちと同じようなものかもしれない。中身のない強面は敬遠されるが、実力と人気の伴った強面はモテルのだ。ポルシェはカイエンGTSを「サラブレッド」と呼ぶ。確かに、そんな呼び名に相応しいスピードとフットワークが与えられているし、ドライビングフィールやエンジンサウンドにも同じことが当てはまる。とても切れ味鋭く、とてもスポーティなのだ。
PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム)とPDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)を組み込んだエアサスペンション、そして21インチタイヤのコンビネーションは、「これがSUV!?」と、俄には信じ難いような安定した姿勢を保ちつつ、オンザレール感覚でコーナーを駆け抜ける。
メカニカルサスペンション仕様も軽快に敏捷に走る。どちらにせよ、カイエンGTSはドライバーの意志に正確に反応し、素早く自在に走る。強い身体能力だけでなく、緻密な頭脳ももっている。パンチ力だけでなく、フットワークも、クレバーさも超一級のチャンピオンということである。
もし、私がカイエンGTSを持つなら、もう1台はエレガントなクルマに的を絞る。
例えばジャガー……2シーターならXK・コンバーチブル、サルーンなら近々販売開始されるニューモデル、XF辺りがいい。
(『@ZINO』2008年掲載記事)

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岡崎宏司の考察と結論
カイエン GTS その1


1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



