岡崎宏司の考察と結論
メルセデス・ベンツ Gクラス その1
Gクラスをもっとも多く見かけるのは
LAのロデオドライブ界隈
GクラスはNATOの正式軍用車両「ゲレンデワーゲン」からスタートしている。だから、スタイルも当然機能本位だし、どこから眺めてもタフ。ほとんど真四角のボディと平面ガラスの組み合わせは、子供が画く自動車みたいだが、迫力と存在感は圧倒的だ。

Gクラスのデビューは1979年。初期のモデルも悪路での強さは感動ものだったが、遅くて、煩くて、高速では真っ直ぐ走らせるのも大変だった。要は戦場仕様からほとんど抜け出せていなかったということである。
だから、実際にタフな4WD車が必要な人や、タフなふりをするのが好きな人……そんな人以外に乗り手はいなかった。
若い頃、私も三菱製J3型ジープに乗っていたことがあるが、こちらはモロ戦場仕様。 乗り心地は人間が壊れないレベル、静粛性は鼓膜が破れないレベル、といった代物だった。でも、私は耐えた。冬でも幌を外し、フロントスクリーンを倒して走った。涙が出るほど寒くても辛くても、耐えてカッコつけていたのは、なにより私が若かった証だ。
もちろんウェアは本物のミリタリー。ひたすらヘビーで丈夫な戦場着は、上野のアメ屋横町で手に入れたものである。
話をGクラスに戻そう。
上記のように初期のGクラスは強者専用車だったが、その後徐々にイメージを変え、今では「セレブ御用達」クラブの有力なメンバーになっている。私の知る限り、Gクラスをもっとも多く見かけるのはLAのロデオドライブ界隈だが、そんな事実が、なにより雄弁に「Gクラスの今」を物語っている。
基本骨格は30年前と同じで、悪路に出会えば戦場で鍛えた凄みを発揮する。が、しかし、Gクラスを愛するセレブたちは、「NATOの正式軍用車両」という硬派な出自のストーリーに、そして、30年間変わらない姿とスリーポインテッドスターが生み出す孤高のカリスマ性に惹かれているのである。
つまり、セレブたちがGクラスに乗る理由は、数あるSUVの中でも圧倒的な個性とカリスマ性を手に入れ、誇示することにある。 そんなことで、Gクラスは今やファッションツールとして特別な地位を得ており、ロデオドライブ界隈で見かけるGクラスには小さなかすり傷ひとつない。みなピカピカだ。
(『@ZINO』2008年掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



