セクシーとはこういうことさ
マセラティ グランツーリズモ その3
冬のリヴィエラをモナコまでクルーズすると
今回の試乗会はシンガポールのセントーサ島で行われたが、グラントゥーリズモの魅力を存分に味わえるような場所はなかった。

試乗を終えてホテルに戻ると、私はすぐパソコンを開き、グーグルマップのルート検索ページにアクセスした。スタートはミラノ、ゴールはモナコ。ともにグラントゥーリズモにもっとも相応しい街だと思うし、ドライブを楽しむには、距離もちょうどよさそうだと思ったからだ。
ルートは単純。ミラノからA7でジェノバまで南下。そして進路を西に変えてA10/E80でモナコへ入る。高速道路を走るこのルートの距離は299km。所要時間は約3時間と出た。
モナコでは「フェアモント・モンテカルロ(通称グランド・ホテル)」に泊まりたい。モナコGPの見所の一つである「グランド・ホテル・ヘアピン」に由来するホテルだ。
モダンでカジノもある華やかなこのホテルは、グラントゥーリズモでの旅にいちばん馴染むと思う。
海に向かって突き出したロケーションも最高だし、地中海の日差しと風を浴びながら、屋上のオープンデッキで食事をするのも最高だ。
モナコGPのコースにはF1で唯一のトンネルがあるが、あのトンネルもホテルの真下を通っている。
以前、トンネルの出口付近、つまりF1マシンがアウト一杯に膨らんでくる場所で、ガードレール1枚を隔ててレースを観たことがあるが、F1ドライバーの凄まじさに痺れまくったことを想い出す。
ちなみに、ホテル前のヘアピンがロウズ・ヘアピンと呼ばれていた頃は、ホテルも「ロウズ・ホテル」だったことを付け加えておこう。
モナコに行けば、当然GPコースを走ってみたくなるが、走れば必ず「ここをどうして1分15秒で走れるんだ!!」と愕然とするだろう。 私は、グランド・ホテル・ヘアピンとトンネル部分を走るのがいちばん好きだが、GPシーンに近いイメージを重ねられるからだと思う。
もしグラントゥーリズモで走るなら、ヘアピンは2速まで落としてフル加速。トンネルも入り口で2速からフル加速して3速へシフトアップ……そんな走り方をすると思う。そんな走り方をすれば、ほんの一瞬でも、忘れられない快感が五感に刻み込まれるような気がする。
マセラティ/フェラーリ・V8の快音を全身に浴びるため、もちろん窓は開け放って走る。
グラントゥーリズモが発散する危険なほどのセクシーさにライバルはいない。
(『zino』2008年3月号掲載記事)



1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



