駆け抜ける歓びさらに深く大きく
BMW 335i クーペ その2
ブランド価値を大きく飛躍させた「デザイン革命」
BMWの「駆け抜ける歓び」を構成する3番目の要素はデザインだ。
「デザインがなぜ?」という疑問を持つ人もいると思うが、答えは簡単。走る歓びは、「走って、曲がって、停まる」ことだけから引き出されるものではないからだ。
われわれがクルマの魅力を量る場合、まず外観デザインに目が行く。いくらパフォーマンスが優れていても、デザインに魅力がなければ目を向ける人は少ない。
BMWはメルセデスに対し、長い間、スポーティで若々しいイメージで対抗してきた。しかし、一部の例外を除けば、癖の少ない、優等生的デザインが多かった。それがBMWの存在感を弱いものにしていた。
そんな流れを変えたのが2001年にデビューした4代目7シリーズだ。その大胆なルックスには拒否反応を示す人も多かったし、商業的にも成功したとはいえない。
だが、その強烈なデザイン面でのインパクトが、BMWを現在の成長軌道に乗せるきっかけになった。
そして、7シリーズで「目ナラシ」をした後、Z4で大胆な彫刻的造形を送り出し、次いで、5シリーズ、3シリーズと量販モデルにも展開。BMWのデザイン革命は成功した。
強烈なキャラクターラインと、鋭利なナイフで一気にえぐり取ったような面のコンビネーションは、クラシカルなイメージすら漂わせるオーソドックスな基本フォルムの上に重ねられることで、一層鮮烈なものとなり、そこに鷹の目のようなヘッドライトがとどめを刺す。

新世代BMWを見ていると、冷ややかな熱さというか、エネルギッシュな静寂さというか、緻密な大胆さというか……そんなイメージが湧き上がってくる。と同時に、その姿は「駆け抜ける歓び」への期待を高め、余韻を愉しませるのだ。
私はそんな新しいBMWのデザインに一発でKOされた。大好きなロードスターだったこともあって、すぐZ4を買った。そして、今の2台目のZ4のオドメーターも、もうすぐ1万kmを超える。
私はBMWのストレート6に強く惹かれているし、四つ角を曲がる時でさえ快感を感じさせてくれるZ4の身のこなしにも強く惹かれている。
そして、1台目を買ってからもうすぐ丸4年になろうというのに、駐めたZ4を振り返って眺めては悦に入っている……そんな状態がいまだに続いているのだ。
私と同様、新世代BMWのデザインに惹かれている人は多い。
エンジンにもシャシーにも、「駆け抜ける歓び」を進化させる新技術が次々投入されていることはもちろんだが、それにも増して今という時代の空気感にピタリとシンクロしたこの「クールなデザイン」こそ、BMWが快進撃を続けるいちばんの要因ではないか。
私にはそう思える。
(『zino』2007年10月号掲載記事)

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1940年東京生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。文化的側面からクルマを斬る自動車評論家。輸入車がレアだった45年以上前に、「旅行に行くから」と言って借りた、父のノーマルのベンツでラリーに出場し、優勝したという、やんちゃな過去も。



